脳が壊れた時

何らかの原因で脳の一部が壊れた時、脳の可塑性はどのように発揮されるのだろうか。

コンピュータでは、お互いのICチップは電線で完全に繋がっているので、たとえ一カ所でも断線が起これば、何十億円もするようなスーパーコンピュータでも全体の機能が失われることになる。脳では神経細胞一個が死滅すると、その神経ネットワークの働きは一時的には失われるが、やがて全神経細胞の軸索から新しく芽が出てきて(発芽
恥スプラウティング)、ついには新しい神経ネットワークが完成し、残った神経細胞同士がシナプスを形成して機能は回復する。このような「発芽」の現象も脳の可塑性の重要な因子である。

神経細胞が死滅した時に発芽が起こると述べたが、最近では、神経細胞が傷害されない場合、すなわち生理的(正常)な状態でも、この発芽の現象が起こることが明らかにされている。脳が障害されなくても、神経ネットワークの組み換えが起こって脳の可塑性が発揮されることは重要である。この生理的な発芽と可塑性が、くりかえし練習、くりかえし学習によって記憶されるという、記憶の最も重要なメカニズムだと現在では考えられている。

意欲をもって脳を使うことがいかに重要であるかということが、これらの脳の可塑性の研究から判明してきたのである。
また、神経栄養因子そのもの、あるいは神経栄養因子やそのレセプターを増やす薬剤を、痴呆やその他の神経が変性する疾患に応用しようとする最近の試みは、ここで述べた研究をもとにして行われるようになったのである。

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